全員営業のポイント 146話
営業強化のきっかけ
先日、ある友人の経営者と会食した時のことです。
「これから日本の景気は、どうなるだろうね?」
私は一言、『わかりません』
・・・と言いたかったところですが、そこは大人の対応で
『さて、どうなるでしょうね?』と答えました。
将来どころか、明日さえ明確にわからないのが世の常です。
もし、それが判るのなら、いますぐ別の仕事をやった方が、
世のため、人のためになるので、経営コンサルタントから、
占い師へ職種替えするでしょう。まぁ、どっちに転んでも
怪しいですが(笑)。
冗談はさておき、昨今話題の東芝やシャープは言うに及ばず、
SONYや任天堂や日産など、日本中の優秀な人材が集まっている
会社でさえ、10年前と比較すれば、苦戦しています。
中小企業の場合は、この一時期は儲かっても、途端にダメになる
サイクルが短く、大企業のように5~7年といった期間の猶予は
なく、去年はよかったが、今年は厳しいとなるのが大半です。
この原因は幾つかありますが、目に見えるものばかりでなく、
経営者が自覚できていないがゆえに、何度もはまってしまう
危険な落とし穴が存在します。
その代表的なものが、意思決定上の暗黙の習慣です。
経営者の方には、最も実感しやすい話をしましょう。
リーマンショックの時に、痛手をうけて、
「これからは変えよう」、「今後は気を付けよう」と考えたこと
はありませんでしたか?
さて、そう考えたことのうち、今も実践し続けていることや、
もし同じ状況が発生しても、当時のような痛手をうけず対応
できることは、幾つあるでしょうか?
〝ノドもと過ぎると、熱さを忘れる”という言葉がありますが、
小康状態が数年続くと、すっかり当時の決意や受けた痛みを
忘れることがあります。
受けた影響は業種・業態にもより違いますが、ここ30年を
振り返っても、バブル崩壊、湾岸戦争、ITバブル崩壊、
鳥インフルエンザ、リーマンショック、あるいは特定地域
では天災などの大きな要因は何年かに一度必ず発生しています。
また、これらの様に日本全体への影響力はなくとも、自社に
おいては、取引先の都合による突発的な取引縮小や、強力な
競争相手の発生などもあったことでしょう。
さて、本日の本題に立ち返りましょう。
ここ2~3年、アベノミクスで多少状況がよくなったからと
いって、そのほんの数年前にあったリーマンショックを忘れ
かけていなかったでしょうか?
実社会をまだ良く知らない新入社員の話ではありません。
すでに、10年~20年と、会社経営に携わる社長でさえ、
そういう落とし穴にはまることがあるのです。
営業現場における管理職やベテラン営業マンにおいては、
いわずもがなです。
うちの取引先は、もう何年も取引しているからといって、
来年も同じ良好な状況が続くなどは、確率的には高くとも、
その保証は決してどこにも存在していないのです。
そして、残念ながら、経営者である以上、この未来が不確定
なことへの不安は永遠に解消することはできません。
とはいえ、逆にいえば、この10~20年でも、数多くの問題
や突発事項を乗り越えてきています。ゆえに、その体験をもとに、
仮説を練って備えることは、完璧とはいかずとも可能なはずです。
それをせずに、もし、これから数年の間に、経営上の危機が生じた
として、なぜ、現場は何も手を売ってないのだと感じるとすれば、
それは現場の人材の有無以前に、経営者の意思決定における
「怠惰」によるところが大きいかもしれないのです。