全員営業のポイント 第193話 成功する営業強化と失敗する営業強化の違い
『辻先生、おかげ様で今期は業績が回復しました。これまでの営業強化と違って、現場が今回は変わったのは、なぜしょうか?』
ー昨年から指導しているBtoB製造業の社長からの質問です。
社長自身、年に何回もセミナーに出たり、ビジネス書も数多く読まれており、いままでにもコンサルタントと契約するなどして新しい営業強化の施策にとりくんできました。
しかし、その多くが現場で運用されなかったり、中途半端で立ち消えになるため、悩みに悩んで、弊社セミナーに参加された後、指導に至った経緯があります。
私は次のように答えました。
「何か一つだけで売上が上がるほど経営は単純ではありません。しかし、中小企業の現場が変わるのに最も大きな要因は・・・
社長が本気で取り組んでいることが現場の隅々まで伝わるかどうかです!」
スタッフによって、能力や実績は個人差があります。しかし、どんなスタッフでも最低20年以上の人生経験と人間関係を経てきています。
社長から見て、社歴や年齢のわりに仕事ぶりに不満ある方がいたとしても、必ず社会人として自分なりの規範や感受性を持っています。
例えば、2代目社長であれば、ベテラン社員の年齢によっては自分の親に近い人がいるかもしれません。
中には、息子くらいの年齢だからという思いが頭のどこか片隅にあるベテラン社員がいたとしても、社長が本気でやりたいと旗を掲げ、真剣にとりくむ様子が随所に見えてくれば、そのうち何割かは出来る範囲で協力しようとし、やがて今回はやっとかないとマズイと残りも思い始めて、今までとは行動が違ってきます。
しかし、研鑽熱心な社長であればあるほど、営業強化を実施するのは今回が初めてではありません。毎年あるいは、半期ごとに何か新しいことを皆の前で発表してきています。ゆえに、今までと同じようなやり方では、いくら良い施策であっても、「どうせ今までと同じ」と現場に思われてしまうのです。
今回こそは本気の本気ということが伝わり、実際に全ての社員の行動が変わるには、施策そのものが良いことは、当然クリアすべき前提条件でしかありません。
要するに、管理職や現場に「これをやっとけ!」と指示命令して、任せるだけではいけないのです。
新しい営業施策の導入~運用においては、今までの業務との調整や見直しはもとより、営業より一段階上の経営戦略からの考察はおろか、事と次第によっては、社長や経営陣の普段の言動からして点検する必要さえ出てきます。
全員営業は、営業部門はもとより、営業が嫌で今の配属を選んだ人も営業支援をしてもらえるようになる『営業×組織=マネジメントそのもの』です。施策や仕組み作りと同等以上に、実行面での配慮と工夫が必要になります。
しかし、それを乗り越えれば、『1.営業マンを増やさず、2.現場負担(残業)も増えず、3.人材育成(新能力獲得)もでき、4.部門間の協力体制が生じ、5.競合は真似できない』という一石五鳥の営業強化へとつながり、BtoB取引の会社であれば、1年で売上2倍や10億~20億単位の年商アップすら可能となるのです。
さて、御社の営業強化は、どれだけ社長の本気度が伝わり、現場がスムーズに運用できるための工夫がなされているでしょうか?
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